いわゆる格安SIMと呼ばれるサービスが続々と登場してきているが、近頃はSIMとスマートフォンをセットにして販売するところもいくつか出てきている。月額の電話・データ通信料金が安価なうえに、端末自体もおトクな"格安スマホ"であることから、注目度も高いようだ。
そんな中、イオンモバイルが格安SIM・格安スマホとして提供するラインアップの1つに、富士通製のスマートフォン「ARROWS M01」が採用された。こうしたSIMサービスでは海外製の端末がセットになることが多く、国産の端末が選ばれることは少ないのだけれど、富士通の、しかもおなじみのARROWSシリーズということで、気になる人もいるのではないだろうか。
今回はこの「ARROWS M01」がどういう端末なのか、じっくり紹介していきたい。
絶妙な性能バランスに仕上がったコンパクトな1台
ぱっと外観を見ると、四隅や側面のラウンド形状、サイズ感、オリジナルのホーム画面の雰囲気などから、ちょっぴり「らくらくスマートフォン3 F-06F」をイメージさせなくもない、Android 4.4搭載のARROWS M01。だからといってスマートフォン初心者向け、として捉えてしまうのは早計だ。
解像度こそ720×1280ドットと、フルHD以上を搭載する最近のフラッグシップ機からは見劣りするものの、画面サイズはコンパクトな4.5インチで、有機ELディスプレイとなっているのがポイント。さらにCPUは1.2GHzのクアッドコアということで、パフォーマンス面にも十分満足できるだろう。
ストレージは8GBで、初期状態で半分ほどの4GBが残容量となっている。物足りないと思ったら、microSDカードや、USBメモリなどの外部ストレージをうまく活用したいところ。メインメモリが1GBなのは、解像度やCPU性能、ストレージ容量とのバランスを考えればちょうどいいし、バックグラウンドで常時稼働するプリインストールアプリも少ないので問題ない。バッテリー容量は2500mAhとなっていて、端末の性能・機能から見るとかなり多く、たっぷり使えそうだ。
その他の機能としては、800万画素のアウトカメラ、130万画素のインカメラを備え、NFC、IEEE802.11a/b/g/nの無線LAN、Bluetooth 4.0に対応し、IPX5/IPX8、IP5X準拠の防水・防塵性能を誇る。ワンセグ・フルセグ機能はないけれど、防水性能を活かしてお風呂でのんびりネット三昧、なんてことももちろんOKだ。最大下り通信速度は150Mbpsということで、ネットワーク速度に不満をもつこともないはず。
改めて外観について触れると、5インチ超の端末にはない、手にしっくりくる持ちやすさは、この4.5インチ前後の端末の特権みたいなものかもしれない、と感じる。側面から背面にかけてのラウンド形状が、平置き状態から持ち上げる時にイイ感じに作用してくれるのが気持ちよく、なるほど、長年ARROWSシリーズなどでノウハウを積み重ねてきた富士通ならではだなあ、と思ったりもする。
ARROWSは法人向けにも供給されているだけに、"格安スマホ"というくくりになるとはいえ、ある意味ビジネス用途で想定されている性能や丈夫さ、安定性みたいなものを受け継いでいるわけで、信頼性はかなり高いのではないだろうか。
乗り換えユーザー、年配者、子どもにも使いやすいシンプルホーム
次に中身について見ていきたい。
ARROWS M01は、SIMサービスを手がけるMVNOが取り扱う製品ということもあり、MVNO独自の支援機能としてIP電話アプリや通信量チェックアプリなどがプリインストールされていることがある。ただ、その数は最小限。他はAndroid OSの標準アプリのみで、余計なものは一切入っていない。ARROWS M01は限りなく"素"のAndroid端末に近い状態だ。
ただ、素のAndroidと1つだけ大きく異なるのは、最初に少し触れた、シンプルデザインのオリジナルホームアプリ「シンプルホーム」が用意されていること。画面上半分に電話、メール、電話帳、インターネット(ブラウザ)という4つの主要機能へのショートカットボタンが大きく配置され、画面下半分にカメラ、時計、電卓、設定といったよく使われるアプリ・機能のショートカットが並ぶ。
ホーム画面を左右フリックすることで、電話の発着信履歴の画面に切り替わり、ホーム画面下部の「MENU」ボタンをタップすれば、メール、カメラ、便利ツール、音楽/動画などカテゴリーごとのボタンがグリッド状に並ぶメニュー画面に切り替わる。つまり、全体的にフィーチャーフォンを意識した画面構成・操作感で、フィーチャーフォンから乗り換える人にとっては迷うことの少ない親切な作りになっているのだ。
もちろん、スマートフォンに慣れているユーザーなら、もう1つ用意されているAndroid標準のホームアプリに切り替えてもOK。よりスマートフォンらしい使い勝手でサクサク使えるだろう。
それと、Google Playにもきちんと対応していることも念のため付け加えておきたい。Android端末として当然ではあるのだけれど、「シンプルホーム」のような初心者・年配者・子ども向けを意識した機能がある端末だと、Google Playが利用できず、プリインストールアプリしか使えない仕様になっていることがある。ARROWS M01は、そういった制限付きの端末とは違い、思う存分好きなアプリをインストールできる、フツーのAndroid端末なのである。
フラッグシップ機にもないカメラ機能が使える!
最後にぜひとも紹介しておきたいのが、ARROWSシリーズのフラッグシップ機ですら搭載されていない、ARROWS M01が独自に備えるカメラ機能、タイムラプス撮影だ。
タイムラプスは、長時間の動画をぎゅっと短く圧縮し、早回し動画として楽しめるもの。微速度撮影とも呼ばれるが、ARROWS M01では「低速度撮影」と表現されている。使い方は、標準のカメラアプリで動画撮影に切り替え、設定画面から「低速度撮影」を選んで撮影を始めるだけ。
「低速度撮影」をオンにすると、どれくらいの間隔で撮影するかを設定することになる。ここでは、0.5秒から24時間まで、39段階の撮影間隔を選ぶことが可能。歩いている時の風景を早回しにして撮影したり、1日1回だけ撮影して移りゆく季節の変化を記録したりと、応用しがいのある使いこなしができそうだ。
タイムラプス動画のフレームレートが30fpsに固定されているので、撮影間隔や撮影シーンによっては動画編集ソフトなどを使ってフレームレート調整しないと見にくいこともあるだろうけれど、スマートフォンでありながら、タイムラプス撮影用カメラとしても大活躍するんじゃないかと思っている。
あと、これはARROWS M01独自というわけではないけれど、Miracastによる「画面のキャスト」ができるのもポイント。Miracastは、スマートフォンの画面やコンテンツをテレビなどの大画面で表示できるようにする機能だ。画面のキャストに対応するデバイスとしてよく知られているのは「Chromecast」だが、ここで使えるのはMiracast対応デバイスとなっている。
さっそくモニターに接続しているMiracastデバイスと連携してみたところ、当たり前のようにすぐさまARROWS M01の画面を映し出してくれた。操作に対するレスポンスも、ごくわずかなタイムラグがあるのみで、快適だ。今回はMiracastを使ったけれど、Chromecastアプリを使えば、Chromecastを介した画面表示ももちろん可能になる。
ARROWS M01は、動画や写真を大画面で楽しむ用途にも十分使えるのだ。
SIMフリー端末として存在感のある、気取らないスマートフォン
というわけで、端末サイズがコンパクトで、独自の親切設計なホームアプリもあってシンプルにも使えるし、その一方で素のAndroidに近いデバイスとして軽快に動作し、さらには凝った使いこなしもできてしまうARROWS M01、いかがだろうか。
国内メーカー製という安心感から、スマートフォンを使い始める人、両親など年配の方、子どもにもおすすめしやすいのは間違いない。でも、外観や機能面でヘンに気取ったところがないのも、個人的にはけっこう玄人受けするところじゃないかと感じている。
大手キャリアではなくMVNOを選ぶのは、フィーチャーフォンからの乗り換えユーザーだけでなく、スマートフォンのことをよく知っている玄人ユーザーも多いはず。と考えると、MVNOのセット端末として登場したARROWS M01は、格安SIM・格安スマホを検討する際の選択肢としては、相当に存在感のある端末になり得るのではないだろうか。