メールを「データベース」に進化させたGmail

2004年に登場したGmailによって、メールの扱い方は大きく変化しました。

以前は、受信したメールはサーバーから削除する、パソコン内のメールも不要であれば削除するといったように、メールを残さないのが常識でした。サーバーやパソコンの記憶領域(ストレージ)を節約するためです。

しかし、Gmailは当初から無料で1GBという大容量のストレージを提供することで、「メールはすべてサーバー内に残しておけばいい」という状況を生み出します。ほぼ一生分のメールを保存しておけるから、メールを削除するかどうかは悩まなくていいよ、となったわけです。

メールは削除しないで「アーカイブする」(一覧から消す)のがGmailの作法。こうしてサーバー内に格納された膨大な数のメールを、Googleの技術を生かして検索することで、目的のメールをすぐに探し当てられるようになりました。メールはいわば、個人のコミュニケーションを記録する「データベース」へと進化したと言えるでしょう。

Gmailはまさにクラウド上に存在するメールのデータベースです

その後もGmailの機能は拡充され、2014年現在、ストレージは無料プランでも15GB(Googleドライブ、Google+フォトと共通)が利用でき、メールだけでは使い切れないほどの容量になりました。プロバイダーメールなどGmail以外のメールも一元管理できる機能や、「優先トレイ」「タブ」といった自動的にメールを振り分ける機能も追加されています。

メールには「やるべきこと」が詰まっている

この記事をお読みの方で、1日に1通もメールを受信しないという人は、まずいないのではないでしょうか? LINEやFacebookでカジュアルなコミュニケーションが行われる一方で、記録として残したいやりとり、特に仕事上のコミュニケーションでは、依然としてメールが主役になります。

しかし、日々やりとりするメールが増えるにつれ、困ったことも出てきました。メルマガなどを除けば、メールには「返事を書く」のはもちろん、「予定として登録する」「関連する用事を片付ける」など、将来とるべきアクションが含まれているのが普通です。そのアクションを促し、管理するための仕組みが、従来のメールソフト(アプリ)には十分に備わっていないのです。

Gmailには、重要なメールを目立たせる「スター」や、「ToDoリスト」のタスクをメールと関連付ける機能があります。しかし、スターには通知などでアクションを促す仕掛けはありませんし、1つ1つのメールをToDoリストに追加して管理するのは、よほどマメな人でないと難しいのが現実でしょう。

Gmailを仕事で活用している場合は、もっと複雑です。即返事をして終わり、というメールは少なく、たいていは「Aさんに電話して資料をまとめて、それをBさんに送ってから......」という具合に、1つのメールから複数のアクションが生まれます。すべてのアクションが完了するまでの間、居場所の定まらないメールは机の上に積み上がる書類のように、[受信トレイ]に残っていくことになります。

結局、メールを開いてアクションが必要であれば、そのメールをあえて「未読」の状態に戻す、というのが習慣になってしまいました。アクションが完了したらメールをアーカイブして[受信トレイ]をスッキリさせておくのがGmailの基本ですが、忙しいときは未読のメールが溜まる一方となり、途方に暮れる......という状況が起こります。この問題は、Gmailがいくら賢いデータベースとして進化しても、変わることはなかったのです。

Inboxは「仕事が片付く」アプリだ!

そんななか誕生したInboxは、Gmailと連携しながらも、まったく異なるコンセプトで設計されています。

Gmailの強みは「メールの蓄積と検索」にありました。それに対して、Inboxの強みはメールから生まれる「アクションの振り分けと管理」にあります。それは、かつてライフハックとともに持てはやされた「GTD」(Getting Things Done)のメソッドを彷彿とさせるものがあります。

GTDは以下の5つのステップで構成され、これらを繰り返すことでアクションを片付けていきます。

  1. 収集:仕事や、やらなければならないこと(=アクション)を1箇所に集める
  2. 処理:最小単位に切り分け、リスト化する
  3. 整理:並べ替え、期日を決める
  4. 見直し:次にやるべきことを見定める
  5. 実行:アクションを順次片付ける

これらをInboxでの操作に当てはめてみましょう。

まず「収集」ですが、アクションはメールに含まれていますから、Gmailという1箇所に勝手に集まってきます。そのGmailアカウントにInboxでサインインすれば、メールが自動的にBundleとして分類されています。

[Inbox]トレイの画面。すべてのアクション(メール)が1箇所に集まり、Bundleによりコンパクトにまとまっています(詳細はこちらを参照)。

「処理」は、メールに含まれるアクションが1つの場合、メールの一覧がそのままリストになります。1つのメールに複数のアクションが含まれている場合は、Inboxの「Reminder」を使って複数のアクションに分解することも可能です。筆者にはInboxのメール一覧が、そのままToDoリストになったように感じられます。

「整理」では、Inboxの「Snooze」機能を活用しましょう。今すぐには対応できないアクション(メール)に対して思い出すべきタイミングを定めて、いったん目の前から片付けておくのです。筆者はこの機能のおかげで、受信トレイが未読メールであふれかえるという悩みから解放されました。

こうすることで、いま対応すべき情報がすぐに分かるようになり、「見直し」が楽になります。そして「実行」できたアクション(メール)は、[Done]によってInboxのメール一覧から消してしまえば、一連のステップは完了です。

Inboxで作成したReminderを[Done]しているところ。メールを[Done]すると、そのメールはGmailでアーカイブされたことになります。

InboxはGTDツールとして開発されたわけではないので、そのメソッドがすべて実現できるわけではありませんが、大部分がカバーされていると感じます。何よりもメールという「仕事が詰まった」情報が1箇所に収集されていること、そして別画面に移動することなく、スマートフォンでも簡単に処理や整理が行えることは大きな進歩です。

とはいえ、Inboxは登場したばかりですから、いきなりGmailから完全に乗り換えるのはおすすめしません。こういったGTD的な側面はInboxで行いつつ、従来通りのメーラーとしてGmailを使う、と使い分けるのがいいでしょう。筆者もInboxをメインに使うようになりましたが、メールの検索や、やりとりの履歴を詳細に見たい場合はGmailを使うようにしています。Googleも、この2つのアプリは並行して使えると説明しています。

従来のメールにおける「時系列で並ぶ」概念をくつがえし、「いま対応すべき情報が並ぶ」環境を実現したInbox。受信したメールに対して自らとるべきアクションを判断しなくても、ある程度はGoogleが自動的に教えてくれる、そんな時代がすぐそこまで来ているのかもしれません。

HINTGoogleが提唱する「マテリアルデザイン」

Inboxでは、Googleが2014年6月に発表したユーザーインターフェース(UI)のガイドライン「マテリアルデザイン」が取り入れられています。スマートフォンでも扱いやすいシンプルな操作を実現しているとともに、パソコンやタブレットなど、異なる端末でも共通したUIを提供することで、ユーザー体験を向上させることを目指しています。Androidの新バージョン「Android 5.0 Lollipop」でも、このマテリアルデザインが全面的に採用されています。

Introduction - Material design - Google design guidelines

 

Googleのサービスの活用について、以下に紹介する。

 参考:Googleサービス一覧                ⇒リンク

 

Google検索                                     ⇒リンク

 

Googleドライブ                                   ⇒リンク

 

GASフォームとスクリプト事例           ⇒リンク

  Google Apps Script入門(サンプル)紹介 ⇒リンク

 

Googleマップ                                      ⇒リンク

 

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