日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「インテル ワイヤレス・ディスプレイ(インテル WiDi)」。これで誰でも簡単にノートPCの画像をテレビに映したり、デュアルディスプレイで快適なPCライフを楽しめるようになるかも!
図1 WiDi対応製品を表すロゴマーク |
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WiDi(ワイダイ:ワイヤレス・ディスプレイ)とは、インテルが開発した新たな無線アプリケーションのこと。この技術を使うと、PCの画面をワイヤレスでテレビに転送することができるようになる。まずは、その使い方から説明しよう。
WiDiを使用するには、WiDiに対応したPC(第2世代インテルCoreプロセッサを搭載したノートブックPC)とWiDi専用のテレビアダプタ、そしてテレビ(コンポジットA/V入力端子またはHDMI入力端子を搭載したディスプレイ)が必要になる。WiDiに対応したテレビアダプタには、図1のようなロゴマークが製品パッケージや製品カタログに付いている。本稿執筆時点では、表1に示すようなWiDi対応製品がリリースされている。
図2 WiDiの活用イメージ |
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表1 WiDi対応製品例 |
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手順1:テレビとWiDiテレビアダプタを接続する |
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テレビとアダプタをHDMIケーブルまたはオーディオ/ビデオケーブルを使って接続する。フルHD(1920×1080)でテレビ画面に表示させたい場合には、HDMIケーブルを使って接続する。接続したらアダプタの電源をONにする。 |
手順2:PCのWiDiソフトウェアを起動する |
次に、PCにインストールされているWiDiソフトウェアを起動する。すると、アダプタが自動検出されるので、選択して接続ボタンをクリックする。 |
手順3:WiDiソフトウェアにセキュリティコードを設定する |
続いて、テレビのリモコンを操作してアダプタを接続した入力画面に切替える。すると、テレビ画面にセキュリティコードが表示されているので、そのコードをWiDiソフトウェアに入力する。操作はこれでおしまい。しばらくするとテレビ画面にWiDiで接続したPCの画面が表示される。なお、セキュリティコードを入力するのは初めてWiDiアダプタとPCを接続する時だけで、2度目からは不要。 |
WiDiのシステム構成を図3に紹介する。WiDiではPCとテレビの間を無線LAN規格 IEEE802.11a/g/nで通信しており、PCとアダプタは約6mまで離すことができる。また、図3に示すように、インターネット接続(無線LAN)でWiFiを使いながら、同時にWiDi(無線PAN)を機能させることができるようになっているので、例えばYouTubeで動画を受信しながら、その映像を直ちに大型テレビ画面で楽しむことが可能だ。このとき、インターネット接続側のWiFiがIEEE802.11nで通信している場合には、WiDi側も同じ11nで通信する仕組みになっている。こうした仕組みは、インテルMy WiFiテクノロジというノートPCをハブとして無線LANと無線PANを同時に利用する技術がベースとなって実現されている。
図3 WiDiのシステム構成 |
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資料提供:インテル |
WiDiでは、次の3つの表示モードがサポートされている。
(1)クローンモード |
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PCと同じ画面をテレビ画面にも同時表示することができる。例えば、PC画面では小さくて見づらいとき、あるいは複数の人たちにPC画面を見せたいときに重宝する。 |
(2)拡張モード(マルチディスプレイモード) |
テレビをPCのセカンドディスプレイとして、それぞれ別の画面を表示させることができる。従来、1台のPCで複数のディスプレイを使用したいときには、ビデオカードを追加するか、マルチディスプレイ機能を搭載したビデオカードに交換する必要があったが、WiDi対応PCならその必要がなくなった。 |
(3)プロジェクタモード(モニターオフモード) |
PC画面の代わりにテレビ画面を使いたいときに使うモード。PC画面には何も表示されなくなる。テレビをメインディスプレイとして使用する場合に重宝する。 |
WiDiの最新バージョンは2.0で、おもな使用条件は以下の通りだ。
●WiDiのソフトウェアがプリインストールされていること ●使用するテレビまたはディスプレイは1280×720以上の解像度をサポートしていること。また、1台のPCで同時に表示できるディスプレイ数はWiDiで使用するディスプレイを含めて2つまで。 ●WiDiソフトウェアを起動するまで、テレビに画面表示させることはできない。従って、BIOS画面、Windows起動中の画面、シャットダウン中の画面はWiDiでは表示できない。 ●マウスカーソルやウィンドウの移動、入力した文字などの表示には遅延が生じる。従って、リアルタイム性が要求されるアクションゲームなどの利用には適していない。 ●現在のところ、WiDiで画面表示できるコンテンツは、著作権保護機能が使用されていない動画のみ。 |
WiDiが最初に発表されたのは2010年の第一四半期で、そのときのバージョン1.0では720pまでの解像度しかサポートされていなかった。また、テレビアダプタを提供する国内ベンダもなかったことから、日本国内ではリリースされなかった。その後、2011年にバージョン2.0となり、1080pのフルHDがサポートされ、さらにテレビアダプタも国内ベンダから市販されるようになったことから、日本国内でも本格的にリリースが開始されるようになったのである。
WiDiの活用範囲は、プライベートからビジネスまで広範囲に渡っている。例えば、プライベートでは、リビングに設置してある大型の薄型テレビに、PCの写真や動画、あるいはインターネット上のコンテンツを映し出して家族で楽しんだり、子供向けコンテンツをテレビに表示させたりしながら、自分はPCで別の作業を行うといった使い方ができる。
また、ビジネスや学校などでは、ノートPCでプレゼンテーションや教材を再生させながら、大型ディスプレイで多くの人たちに見せることができるようになる。あるいは、参加メンバーが多いときのWeb会議システムの画面表示も、WiDiの拡張モードを利用することで見やすくなる。今後、PCベンダ各社から提供される2011年以降の新しいPCモデルでは、WiDi対応製品が急速に増えていくと予想されることから、ようやくマルチディスプレイという使い方が一般ユーザの間にも浸透していくと考えられる。
なお、現在のバージョンでは市販のブルーレイディスクなどのコンテンツはHDCPで保護されている関係で、WiDiソフトウェアでは表示できない。そこで、次期アップグレードでは、こうしたコンテンツも再生できる仕組みを取り入れる予定だという。今後の動向に期待したい。
取材協力 : インテル株式会社
掲載日:2011年6月15日